【大学生が読んだ本】リアル・デモクラシー――ポスト「日本型利益政治」の構想【法学部の場合】

d15beeecc57cf37801ff0370eef56374_s

民主主義とは何か、求められる「リアル・デモクラシー」。

古今東西、民主主義のあり方は常に論じられてきた。歴史はギリシアに遡り、様々な統治形態(専制、寡頭制など)との比較を通して議論は洗練され、人類は虚構にして最大の叡智を手にした。しかし虚構である以上、民主主義は確定的ではない。半分は時の趨勢に委ねられ、もう半分は主権者自身の手で改変されてゆくものなのだろう。

メディアを通し強く視覚に訴えかける、国会の外縁に集まる人々の姿。これを、安保法制に際して顕在化した「決めすぎる政治」へのカウンターとして捉え、「街頭のデモンストレーション」と「決めすぎる政治」の対構図へと定式化する論法、この方法に編者の宮本は疑問符を投げかけている。

宮本は序章において、六〇年代の学生運動を念頭に丸山眞男の「反逆と忠誠」を援用しながら、社会運動と民主主義がしばしば連結しない可能性を提示している。また、政権与党が立憲政治との緊張を生む事態となった、「決めすぎる政治」への牽制も述べ、前記の対抗図式から、何れかが民主主義として優れている事を導き出す危うさを指摘している。

それでは、今作の中で検討されている民主主義の形態はどのようなものなのか。その内容は、題にも表れている通り幾分リアル、前提に根を下ろし堅実に筆を進められている一方で、描き出す民主主義像はダイナミックな構成となっている。

まずは導入として、日本が戦後築き上げた生活保障レジームと利益政治の相関について言及し、戦後、社会団体が良くも悪くも人々の生活を支える基盤であった事を確認している。そして、その基盤が様々な社会変動を受け衰退している事を示し、社会団体の領域が縮小する事とパラレルに、ポピュリズムが拡大し、同時に人々の生活の質も低下してきた事を明らかにしている。

このポピュリズムの蔓延、生活保障の崩壊という現代日本が抱える最大の病理をいかにして治療するか。この問いに本書は正面から対峙している所から、筆者達の心意気が垣間見える。

彼らはこれらへの処方箋を「リアル・デモクラシー」と名付けた。「リアル・デモクラシー」を簡約するならば、社会集団を基礎とした民主主義と言える。しかし、前述した通り、日本の旧来の社会集団の規模は低下し続けてきた。この旧来の社会集団を、しばしば政治腐敗の温床となった利己的な形態から、公益を追求する集団へと更新する事で、再び政治過程に組み込もうとする点で本書は野心的だ。社会集団の再興が進めば、両問題のリスクは低下すると言える。

こうして旧来の社会集団を再建し、NPOやNGOといった新たな社会集団と重層的に交差する、豊饒な政治空間を国会と人々の間に創造する事で、「リアル・デモクラシー」の初心は達成される。

「決めすぎる政治」と「街頭のデモンストレーション」に半ば看過されていた、政治空間に焦点を向け、そこにダイナミズムを生もうとする。三四七頁に及ぶ本書は、危うい二項対立に風穴を開ける力作と言えるだろう。

取材・文責:中央大学新聞学会

関連記事

  1. 盆栽フェス
    平成29年4月に開催される「第8回世界盆栽大会inさいたま」を5か月後に控え、大会を記念して、平成2…
  2. jcf2016_flyer
    ワオ・コーポレーションpresents 第14回JCF学生映画祭が、11月25日(金)、11月26日…
  3. eb649044c9479c9c784212c1e285c6be_s
      こちらのページでは、熊本県内の各自治体の社会福祉協議会が公開しているボランティア情報についてお…
  1. eb649044c9479c9c784212c1e285c6be_s

    【熊本・九州地震】熊本県内各地のボランティア情報

  2. sabaemegane

    ミスキャンパスファイナリストも応援!! 福井県鯖江市サバエメガネメッセ開催!

ページ上部へ戻る